サロンで売るべきものは技術メニューだけではない

コロナ禍となり、対面接客の機会が激減しています。状況は徐々に好転していくと考えられるものの、コロナ禍以前と同じ状況が数年以内に戻ってくるかどうかについては、かなり厳しい予想も出ています。
ただ希望があるとすれば、「プロにカウンセリングしてもらいたい」「自分の肌について知りたい」という欲求は、消えるどころか高まっているのではないかということ。仕事でもプライベートでもビデオチャットを利用する機会が増え、画面越しに自分の顔を見る回数が増えたことから、「きれいになりたい」「きれいに映りたい」という欲求自体は高まっていると考えられるのです。

お客様に信頼される専門家を目指す

エステでも美容院でも、予約された技術メニューに漫然と入ってしまっていませんか。
それはとてももったいないことです。
メニューに入る前にぜひカウンセリングを組み込んでください。最近悩んでいることはないかと質問を投げかけ、プロの目でじっくりと見て気付いたことをお客様と共有しましょう。
ここで大切なのは、お客様に現状をしっかり把握してもらうことです。プロであるあなたの見解は、お客様にとっては自明のことではありません。
あなたの見解がお客様の予想通りであれば、お客様は「プロの目から見てもそうなのか」と安心しますし、逆にお客様の予想とは外れたものであっても「プロの目で見るとそういうことになるのか」と専門家からの意見は喜ばれます。
それを踏まえて技術メニューを実施し、最後に再びカウンセリングを行いましょう。
メニュー前にお客様と共有した点について、対処法やホームケアを提案します。サロンの施術でここまでよくなりました、この先はお客様のホームケアでさらなる改善が期待できるという点をアピールするのです。
この提案は具体的なほど効果があります。お客様の日常的なホームケアを聞き出すことができれば、プロの目から見て改善すべき点はいくつでも出てくるでしょう。それをお客様にお伝えするのです。プロには分かり切ったことでも、お客様には初耳という情報も少なくないかもしれません。
そうしたオーダーメイドの対応はお客様の信頼を生みます。お客様に「私だけの専属アドバイザー」と思ってもらえたら、大成功です。
ネットの口コミで評判のいい化粧品サンプルを初めて訪れたカウンターで見ず知らずの店員からもらう場合と、あなたにぴったりだと思うのでぜひこういう時に使ってくださいと具体的にアドバイスしてくれる顔なじみの担当者からおすすめの化粧品サンプルをもらう場合。ワクワクして使ってみたい、使ってみて良かったら製品を購入してみたいと感じるのはどちらだと思いますか。

化粧品の購入という体験を決まった脚本のある「ストーリー」ではなく、一人ひとりが自由に語る「ナラティブ」として捉える意識が重要です。
お客様は化粧品を使用してどう効果があったかという点だけではなく、どのようにしてその化粧品を手に入れたか、使用感を報告し感情を共有できる相手がいるかどうかという点も大事にしているのです。
せっかくご来店いただいたのに技術メニューだけを提供するのはもったいないと感じます。専門家としてお客様と真摯に向き合い、信頼していただけるような接客を目指したいですね。